世界に売ろう

数年前(いや、もしかしたら今でも)、政府はベンチャーを含む中小企業に「世界に出ろ」としきりに呼びかけていた。商圏は広いに越したことはないので、それを「なるほど」と思い、実際に海外に進出した企業は少なくないだろう。

しかし、これは本当に正しいのだろうか?私は、経済産業省の顧問をやっている方に会う機会があったので、率直に聞いてみた。市場が飽和しつつある大企業ならまだしも、中小企業が安易に海外に出て行った場合、人的資源も資金も限られているのでリスクが大きいのではないかと。
納得のいく回答は得られなかったが、「数打てば当たる」でそのうちの何社かが成功し外貨を稼いできてくれればラッキーという考えに思えてならなかった。

さて、企業が海外戦略を持つこと自体、悪いこととは思わない。ただ、中小の企業にとっては順番が大切で、これを間違うと危険にさらされる。通常、海外進出というと、支社や営業所を設ける物理的な進出と、提携や買収など資本的な進出が考えられる。実際にほとんどのケースがこの2つのうちのどちらかだろう。

しかし中小企業の場合は、その前にやらなくてはいけないことがある。

それは、「外国の人も欲しがるような商品(もしくはサービス)を開発すること」だ。例えば今、海外ではかなりの日本酒ブームだ。世界中に日本食レストランがあるし、そのどこにも日本酒が置いてある。もちろん酒造メーカーは展示会に出かけたり、試飲会を開いたり、色々と努力をしたと思うのだが、それはきっかけにしか過ぎない。結局はおいしいと思って貰えなければ、それらはお店に並ばないのだ。

営業は重要だし、売れ出すと拠点も必要だろう。しかし、もっとも最初にやらなければいけないのは、外国の人までもが欲しいと感じるものを作ることなのだ。世界に何かを売りたいならば、世界中の人々の好みを理解し彼らが欲しがるものを作らなくてはいけない。それが商品でもサービスでもだ。
それを先にやらないで、物理的進出や資本的進出を優先させた中小企業がみな失敗しているのではと思えてならない。

国は「世界に出ろ!」ではなくて「世界に売ろう!」と言うべきなのだ。

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小方 功

Isao Ogata

株式会社ラクーン代表取締役社長

1963年札幌生まれ。北海道大学卒業後、パシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。
独立準備のために30歳で会社を辞め、1年間中国に留学。
帰国後、家賃3万円のアパートの一室、お金、人脈、経験もないところから100万円でラクーン創業。
大赤字や倒産の危機を何度か切り抜け、02年にはラクーンの主力事業となるメーカーと小売店が利用する卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」をスタート。そして06年にはマザーズに上場。
現在、ラクーンは企業間取引を効率化するための4つのサービス「スーパーデリバリー」「T&G売掛保証」「Paid」「COREC」を提供している。

プライベートではまっているのは釣り。あとは習字を習い中。