教育2
私は、独立心を理解・応援するような教育方針を広くアピールするために、求人ページのトップにこう書いた。
収入と安定
安定した生活を望むなら、ベンチャー企業に勤めることをお薦めしません。
実際にベンチャー企業の多くは、弊社も含めて、安定を売りにはしていません。
そこに求めるべきものは安定ではなく、
「何を得るか?」
「会社がなくなっても、良い経験をしたと思えるか?」
なのです。私が考える「得るべきもの」は組織に依存しない、どこでも通用する能力です。
我々は自社の成功を信じて疑いませんし、それに同意する人しか誘うこともできません。
安定を求めている人がこの会社を選ぶのは不本意ですし、またそれに応えるつもりもありません。
そもそも絶対的な安定というものは存在しません。
たとえ会社が安定していても、家庭の事情や個人の事情で退職や転職の必要に迫られることもあるでしょう。
賢明な人はいつ退職しても困らないように「能力」を磨いています。
重要なのは、会社に頼らなくとも生きていける能力を持っているかどうかと言うことです。
私の知人には大企業を辞めた人も多いですが、能力を持っている人たちは退職によって人生を左右されずに過ごしています。
我々のビジネスにおいては、たとえ失敗しても失う物は何もありません。
何故なら、本当に大事なものは経験であり、知識だからです。
これは誰がどんな手段を使っても奪うことのできるものではありません。
当社では日頃からスタッフ達に、いつでも辞められる人間でいるようにと言っています。
再就職に必要な能力をできるだけ短時間で身につけ、やってきたことを人に見せられるように整理し、自分にとってためになる仕事をする。
ですので彼らは今、辞められると最も困るスタッフ達になっています。
この求人を見て入ってきてくれた1人目が、現在フィンテック事業担当の取締役で副社長の石井、2人目が現在CTO(技術担当取締役)の羽山だ。
彼らは、社内はもちろんのこと取引先を含む業界でも高い評価を得ていると思う。
更に、私は社内の教育プロジェクトのあり方を考えた。
できれば一つの体型を為していた方が分かりやすい。全体が見えるような教育のあり方だ。
ましてここは学校ではなく、会社だ。
いつ、なんの役に立つのか曖昧なものを教えていては身にならない。
実用的で、分かりやすくて、楽しいものでなければいけない。
私は経験的に、良い学びは楽しいと信じている。
この問題を解決するために参考にしたのは“学士の卒論”だ。
大学というのは本来、“学士”という学位を取るために行く場所だ。
その学士を取るには卒業論文が必要であり、その卒論が認められて初めて学士になることができる、というのが本来の“大卒”の意味だった。
したがって、大学1~3年で学ぶ内容はすべて卒論を書くために必要な基礎知識になっていたのだ。
例えば土木工学の学位を取りたいのであれば、参考にしなくてはいけない論文は英語だけではなくドイツ語のものもあるので、事前に第二外国語でドイツ語を専攻しておこうとなるわけだ。
そうして四年間の集大成となるのが卒業論文なのだ。
まあ、卒論のあり方を議論したいのではなく、このような考え方を参考にして社内の教育体制を作ろうとしたということだ。
つまり、全ての研修を首尾良く受けた暁にはいつでも独立起業できる人間になれるように、研修の中身を構成しようと考えたのだ。
実際にラクーンを辞めて起業している人間は20名を超えているが、彼らは起業後に役立つ勉強を働きながらしてきたということだ。
次回以降、それらの能力の一部を紹介していくこととする。