文化的なものの価値

私は、一部の人からアンチ学歴主義と思われているようだが、それは正確な表現ではない。
私は学歴に惑わされずに、この会社に必要な人をちゃんと集めたいと心掛けているだけだ。そして、なぜそうするかというと、その方が儲かると信じているからだ。

私から見ると受験社会(学歴社会?)が生んだ最大の弊害は「試験に出ないものをみんなが蔑ろにする」ようになってしまったことである。試験に出なくても大切なモノがたくさんある。

日本の企業が現在置かれた現状をよく考えてみて欲しい。バブル崩壊後、ありとあらゆる国内のマーケットは縮小の一途である。加えてモノが溢れている。今後は人口も減っていくだろう。規模を維持したい企業が世界に売っていこうと考えるのは必然である。しかし、自動車メーカーも時計メーカーも家電メーカーも苦戦が続いている。
なぜだろう?この問題は、とても複雑な問題とされているが、もっとシンプルに考えることはできないだろうか。

例えば、年収一千万の人が欲しがる国産の時計が一体幾つあるのだろう?二千万円の人が乗りたいと思う国産車がどのぐらいあるのだろう? 私の周辺では限りなくゼロだと思われる。
一千万とか二千万とか、そんな庶民感覚のない話しをするな、なんて言わないで欲しい。海外の人から見て、日本製品は貧困層向けでないのだ。我々は「モノの安さ」でアジアと競争するわけにはいかないのだ。セレブ向けとは言わないまでも、ある程度の富裕層が対象となるのは前提なのだ。

なぜ富裕層が欲しいと思う日本製品がないのだろう?日本製品は、安い(例えば車などドイツより日本の方が安い)し、性能も良い、そして壊れない。
しかし、ここにとても重要な1つのキーワードが抜け落ちている。それは「かっこいい」というキーワードだ。
「美しい」でも「かわいい」でもいい。つまりは「見た目が大事」ということだ。

日本人は勤勉と言われるが、高学歴である人は更に勤勉だ。しかし、彼らがしてきた努力は「国語・数学・理科・社会・英語」に偏ってはいないだろうか。そして受験を期に、それ以外のものをまるで大事ではないもののように定義づけてしまってはいないだろうか。最も多感で、頭脳も心も育つだろう時期に「大学が受験科目として決めた、たった数種類の科目」に偏って学んでいるのだ。一般的に一流といわれるほとんどの大学の受験科目に、ダンスも釣りもバイオリンなんかも入ってはいない。ラクーンでも、高学歴と言われる連中が1/3程いる。彼らは入社するなり、私から「遊べ」と言われる。
面接では、楽器とかスポーツとかやりますか?趣味はなに?と質問される。釣りをするとか、友達とバンドを組んでいるとか大歓迎である。 大卒でも、大卒でなくても、努力家しか採らないので、遊びを推奨してなんら弊害はない。

ラクーンはメーカーではないが、取引先はメーカーである。社員はモノの善し悪しを知っている必要がある。また本業のeコマースもこれから更に細分化されていくと考えるので、娯楽や趣味に関する知識も役に立つ日がくるだろう。

学歴社会を改善するのは簡単ではないだろう。そうであるならば、思い切って受験に「楽器」や「スポーツ」ついでに「お茶」や「お花」などの文化的なものも入れたらどうだろう?そういう大学を卒業した人間が増えてきて、企業もその価値を認めるなら、もしかしてフェラーリよりもカッコイイ車を作れるかもしれない。ロレックスよりも美しい時計を作れるかもしれない。

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小方 功

Isao Ogata

株式会社ラクーン代表取締役社長

1963年札幌生まれ。北海道大学卒業後、パシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。
独立準備のために30歳で会社を辞め、1年間中国に留学。
帰国後、家賃3万円のアパートの一室、お金、人脈、経験もないところから100万円でラクーン創業。
大赤字や倒産の危機を何度か切り抜け、02年にはラクーンの主力事業となるメーカーと小売店が利用する卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」をスタート。そして06年にはマザーズに上場。
現在、ラクーンは企業間取引を効率化するための4つのサービス「スーパーデリバリー」「T&G売掛保証」「Paid」「COREC」を提供している。

プライベートではまっているのは釣り。あとは習字を習い中。