管理職の研修(特別編):会話力
「会話力」についてアドバイスして欲しい、と部下に頼まれたことがあります。たしかに会話力は重要です。
一口に会話と言っても「プレゼンテーション」「営業トーク」「日常会話」など色々な会話が存在しますが、ここでいう会話は、複数でのブレストや5~6人での飲み会などでの会話を指します。
人は会話からその知性を測り、期待の度合いを決めています。
したがって、会話が下手だと「あまり賢い人ではない」と思われてしまい、そのイメージを変えることは容易ではありません。
また、上手に会話が出来るということは、心の中にあるものを正確に表現できることを意味し、信頼を得られるばかりでなく、自分自身を表現するという大きな「喜び」へとつながります。
私は管理職のマニュアルに会話力の項目を加えました。
会話力を構成すると思われる6つは、以下の通りです。
1)姿勢(上半身の姿勢、目線、手ぶり、表情など)
正しいことを言っていても、目も合わせず下を向いてぶつぶつと呟いていたのでは、良い印象は与えられません。真っ直ぐ目を見て、明るい表情で話しましょう。
ずっと目線を合わせると違和感があるので、目の少し下を見るか時々外すようにしましょう。
姿勢も大切です。ピンと胸を張り、顎を上げすぎず下げすぎず正しい姿勢で話すことは、「信念に基づきまっすぐ話している」という印象に繋がります。
2)音声(音量、トーン、語尾、話量、間、癖など)
会話が上手な人は、音を上手く使い分けています。メリハリを付けて上手に話しましょう。
ジャパネットタカタの高田元社長は、故意に東北訛りで話していたとして有名です。
会話の内容だけではなく、音によっても印象が変わるという一つの例でしょう。
私の場合、投資家説明会や就職説明会は堂々と大きな声で、部下の相談を聞くときや相手を諭すときには親身な感じでゆっくりと、営業の際は自信ありげにはっきりと、など使い分けています。
さらに、話量と間(ま)にも注意してください。
そもそも早口で話量が多い人の場合、相手からすると聞き取りづらく、自信がないように見えてしまいます。
場合によっては、何かを誤魔化しているようにさえ見えることもあります。
経験的に、思い切って内容を減らしてでもゆっくり話した方が意思は伝わりやすく、説得力は増すように思います。
また、会話において“間”はとても重要です。
相手に考える時間を与えることで質問もしやすくなり、好印象に繋がります。
特に1対1の会話において間がなく連続的に長時間話す人は、相手に悪い印象を与えてしまうかもしれません。
注意してください。
そして、人数が多い場所で発言する際は、自分から一番遠い人に話しかけるようにしてください。
そうすることで、全員によく聞こえます。
3)内容(主語、述語の省略、話題選び、なぜの部分)
当然ながら、会話において内容が最も重要です。
脈略がなく、5W1Hが不明確な内容であれば、それは良くない会話です。
「なぜ?」という相手の疑問を無視して話し、相手が聞きたいことではなく自分の話したいことを一方的に話し続けているようなケース。これではまるで、コミュニケーションのプロダクトアウトです。
会話でも、マーケットインが理想的です。聞き手がその話の続きを聞きたがっているかどうかは、表情を見ながら感じ取るように努力しましょう。
また、ビジネスの会話においては、主語述語などの省略は危険です。
ミスコミュニケーションの原因になります。
はっきりと何が何に何をしたのか、話すようにしましょう。
また、仕事上のミスコミュニケーションは毎日のように各所で起きていると思ってください。
これは身近な人、親しい人ほど起こりやすいと思います。
報告なのか相談なのか、業務の指示なのか感想なのか。
何度も確認するようにしましょう。
4)テクニック(自信を持って言い切る、褒め上手)
会話にはテクニックも存在します。
指導的な立場の人は、ある程度自信を持ってはっきり言いき切らないと、何だか自信がなさそうに見えてしまい、学ぶ側が不安になってしまいます。
また、会話の途中途中で相手を褒めることも重要なテクニックです。ただし、相手が最も褒めて欲しい部分を正確に言い当てないと適当な人だと思われてしまい、逆に信頼を失います。
また、信頼関係を築きたい場合は「自分も同じ悩みを抱いたことがある」など、自分のエピソードを交えて話すのがとても有効的です。
5)聞く力(なるほどという力、理解力、キャッチボール、返し力、7:3、間を空ける)
究極の会話力は「聞く力」によって完成します。例えば、歴史に詳しい人がいたとします。
この人は歴史に関心のない人の前で、歴史について語りたいと思うでしょうか?逆に、歴史に詳しい人の前ではどうでしょう?多分、とても熱心に歴史に付いて話すと思います。
このように、聞き上手な人がいると会話は弾むのです。
そもそも持っている知識も大事ですが、頷くタイミングや返事の仕方などによっても違いが生まれます。
特に、優秀な営業マンは聞く力に長けています。人間は話を聞いて欲しいのです。
聞き上手な人は、頷くタイミングが上手です。相手の話を復唱してみるのもいい方法です。
「7月に海に行きたいのです」→「7月に海…」といった具合です。
聞く力は理解力でもあります。相手が何を言いたいのか観察して、深い理解を持って言葉を返すことが出来たら、もう完璧です。
また、(2)の音声のところでも言ったように、聞く力においても「話量」と「間」はとても重要です。
相手に7程度の量、話をさせて、自分が3程度の量の話をするのが理想です。
この7:3は、私の経験から理想的だと感じる話量です。
さらに、会話では間を空けるようにも注意しましょう。
間を空けずにマシンガントークを繰り広げると、相手に大変な不快感を与えます。
間を空ければ、相手もそこに入ってこられるのです。ここは素直に入れてあげましょう。
プレゼンの後の質問タイムなどでは、その質問を正確に聞き取って的を射た回答が出来ないと、プレゼン自体が台無しになります。
ただし、緊張しているとこれがなかなか出来ないものです。
心穏やかに落ち着いて質問によく耳を傾け、分からなかったらもう一度聞いてみましょう。
「○○という質問ですね?」と繰り返すのもいいでしょう。
6)身だしなみ(服装、立ち振る舞い)
会話における説得力を手に入れたいなら、服装も大切です。
各々のシチュエーションや役職、職業にあった服装を心掛けましょう。
上司からアドバイスを受けるとき、その上司が学生のような服装だとどう感じるでしょう。あまり説得力はないかと思います。
また、現代人にとっては服装もマナーの一部です。自分に合った色、サイズの服装を心掛けましょう。
これらの課題は、自覚することで大きく改善できます。
下記のチェックシートを使い、「何が課題なのか」を理解しましょう。
【会話力チェックシート】
1)姿勢(上半身の姿勢、目線、手ぶり、表情)
□まっすぐ目を見て明るい表情で話している。
□姿勢がよい。
□ピンと胸を張り、あごも上げすぎず下げすぎず正しい姿勢で話している。
2)音声(音量、トーン、語尾、癖など)
□音を上手く使い分けている。
□メリハリを付けて上手に話している。
□滑舌が良い。
□シチュエーションによって声色を上手く使い分けている。
3)内容(主語、述語の省略、話題選び、なぜの部分)
□話に脈略がちゃん存在する。
□内容そのものが続きを聞きたくなるものである。
□正しいと思えることを言っている。
□なぜという相手の疑問に違和感を与えていない。
□相手の興味を考えて、話したいことを一方的に話してはいない。
□主語述語などを正しく使えている。
□シチュエーションをよく考えて話している。
□例え話が適切で上手である。
4)テクニック(自信を持って言い切る、褒め上手)
□ある程度の自信を持って、はっきり言い切ることが出来ている。
□褒め上手。
□自分のエピソードを交えるなど、進め方が上手い。
5)聞く力(なるほどという力、理解力、キャッチボール、返し力、7:3、間を空ける)
□相手の話をうまく聞けている。
□楽しく会話のキャッチボールが出来ている。
□「なるほどね」と同意と理解をうまく示せている。
□話量が適切である。
□間を空けて話している。
□質問を正確に聞き取り、的を射た回答が出来ている。
6)身だしなみ(服装、立ち振る舞い)
□服装が立場や役職、職業に合っていて、会話に説得力と自然さを与えている。