効率化を目指そう

ワンマンって書いたバスを見たことがあるだろうか。
田舎に行くと今でも希に見かける。これは文字通り、「1人でやっているよ」という意味で、なにを一人でやっているのかというと、バスの運行業務を一人でやっているのだ。じゃあワンマンではないバスって何なのかっていうと、運行業務を二人でやっているバスである。途上国などで、運転手以外に車掌が乗っているバスを見たことはないだろうか。あれがワンマンではないバスである。車掌が乗車賃を受け取ったり、キップを売ったりする。それを自動化して機械にお金を入れるなどしたのが、いわゆる「ワンマンバス」なわけだ。

さて、車掌が1人いなくなった。
ここで浮いた人件費は幾らぐらいなのだろ。300万円だろうか。500万円だろうか。車掌にバイトっていうのはちょっと考えにくいので、それなりの人件費が浮いたと思う。このように自動化など工夫改善して効率化していくことがビジネスモデルの目指すべきところである。私の個人的な意見だが、日本では「アイディアを出した人」よりも「たくさん働いた人」の方が褒められるし、多めの給料を貰っているように感じる。そういう会社だと、「社長!提案があります。私の仕事なんですが簡単に自動化することが出来て、つまりは私、不要です」なんて提案をしたものなら、失業が待っている。
つまり、その仕事を効率化できると良く理解している当人からその仕事の効率化の提案はなされないわけだ。この提案をした人は高く評価されるべきだし、その後好きな移動先を選ばせてあげるべきである。企画や改善の担当者にするのもいいかもしれない。

話を前に進めよう。効率化や自動化よりももっと進んだ考え方が、「コストは増えないが、売上だけが伸びていく」ビジネスモデルだ。ここを意識すると利益は加速度的に増えていく。
例えば、音楽CDなんかがそれに該当するだろう。アーティストが一回レコーディングしたら、あとは売れた分だけ儲かることになる。今はネットでダウンロードして聞く時代である。CD代も掛からない。アーティストは、家で寝ていても売上はどんどん伸びていくことになる。コンサートをやってもテレビに出ても、それは別の収入として計上されるだろうから、コストだけが増えるわけではない。ただし、人気がなれば儲からないのは当然である。

他にも、スマホゲームがこれと似た特徴を持つ。一度開発したら後は何人がそれで遊ぼうと、利用しようとコストはさほど増えないのだ。だから良い作品が出来たなら、売上だけが伸びていくので、爆発的に利益だけが増えていくことになる。多くのITベンチャーが一斉にゲームの開発に乗り出した理由が分かっていただけるかと思う。

これらのビジネスに比べて、どうしても売上にコストが付いてくるビジネスモデルがある。
例えばチェーン店の飲食店などがそうである。売上を増やすためには店舗を増やさなくてはならない。しかし、そのためにはまた人を雇い、家賃を払い、チラシを撒き、コストも同様に増えていく。したがって、何百店舗何千店舗とあるのに、利益が意外と少なかったりする企業があるのはそのためだ。類似したお店がある場合、消費者はそれを比較して利用するので安い方に人は集まる。つまりは安売り競争が起きるので、利益は更に少なくなってしまう。

同じ小売業でも、差別化に成功できれば安売り競争を避けられる可能性はある。
私の知っている宿に、6泊7日で12万円の宿がある。基本的には6泊が前提で、大変な人気で三ヶ月以上予約が取れない。よほどおいしいものを出すのかというと、ほとんど食事も出ない。シーツの交換も布団の上げ下げも自分でやる宿だ。実は、この宿は断食施設なのだ。私は10年以上通っているが、とても人気で予約困難な宿なのだ。
このように差別化にさえ成功できれば、収益性の高いビジネスとなることは可能なのだ。

ちなみにラクーンが展開しているのは、これらのビジネスに比べて収益性が高くなる可能性のあるビジネスだ。Eコマースの持つ、コストが固定され売上だけが伸びていくという特徴に注目し、2000年からEコマース事業を中心に展開してきた。また、BtoBだと更に競争が少なくなるので差別化もしやすくなる。
現在、ラクーンの中で重要度を増していているフィンテック事業に関してはまた別に述べるが、それらを重視しているのも同様の理由からである。

小方 功

Isao Ogata

株式会社ラクーンホールディングス代表取締役社長

1963年札幌生まれ。北海道大学卒業後、パシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。
独立準備のために30歳で会社を辞め、1年間中国に留学。
帰国後、家賃3万円のアパートの一室、お金、人脈、経験もないところから100万円でラクーン創業。
大赤字や倒産の危機を何度か切り抜け、02年には主力事業となるメーカーと小売店が利用する卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」をスタート。そして06年にマザーズ上場、16年に東証一部に上場し、22年には東京証券取引所の市場再編により、東証プライム上場に。
現在、ラクーンホールディングスは企業間取引を効率化するためのサービス「スーパーデリバリー」「SD export」「COREC」「Paid」「URIHO」を提供している。

プライベートではまっているのはゴルフ、釣り、ワイン、韓流ドラマ。
株式会社ラクーンホールディングス