コアコンピタンスを重視する

新規事業を考える際、なにを重視するかとよく聞かれる。一般的に議論されるのは、(1)主力事業、既存事業とマーケットが同じであること、(2)主力事業、既存事業とシナジー(相乗)効果があることなどか。

実は弊社では、この2つをあまり重視しない。弊社で重視するのは、主力事業や既存事業と使う社内リソース(専門性)が同じものであることだ。

弊社の主力事業は、スーパーデリバリーである。ここで培われた専門性は、中小企業への法人営業力やそことの信頼関係、またeコマースに特化したシステム開発やデザイン力、さらにそれに付随するマーケッティングやプロモーションに関する知識などだ。このように、企業の中核を為す専門的な能力のことをコアコンピタンスという。どんなに事業が増えていっても、このコアコンピタンスが使えるものであることがとても重要なのだ。

なぜそれが重要かというと、そうすることによって「ここで働くみんなが、会社の将来のためにするべき努力や勉強が明確になるから」である。

仮に上記の(1)や(2)の条件を満たすビジネスを始めようとしても、その専門家が社内にいなかったら、金銭的な条件を提示してどこからか連れてこなければ行けなくなる。もちろん、そのような決断をする会社もあるかと思うが、私はそれをやらない。さすがに、そのような理由で頻繁に新しい人が増えるなら、信頼関係を作ることができなくなるからだ。誰との信頼関係かというと、私とその人、もしくは前からいる人とその新しい人の信頼関係だ。

従業員に、愛社精神を求める経営者は少なくないだろう。しかし、今までここで頑張ってきた人間が積み重ねてきた専門的な能力を使い切ろうともせず、事業の都合(利益のため?)だけで突然どこかから新しい人を連れてきて、明日からはそっちが大事だと言われても、私ならそこに居続けて頑張ろうとは思わないだろう。そんな理由で、脈略のない新規事業を次々に立ち上げると、これまで頑張ってきた大切なOLD MEMBERを失う可能性が増えるのだ。

小方 功

Isao Ogata

株式会社ラクーンホールディングス代表取締役社長

1963年札幌生まれ。北海道大学卒業後、パシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。
独立準備のために30歳で会社を辞め、1年間中国に留学。
帰国後、家賃3万円のアパートの一室、お金、人脈、経験もないところから100万円でラクーン創業。
大赤字や倒産の危機を何度か切り抜け、02年には主力事業となるメーカーと小売店が利用する卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」をスタート。そして06年にマザーズ上場、16年に東証一部に上場し、22年には東京証券取引所の市場再編により、東証プライム上場に。
現在、ラクーンホールディングスは企業間取引を効率化するためのサービス「スーパーデリバリー」「SD export」「COREC」「Paid」「URIHO」を提供している。

プライベートではまっているのはゴルフ、釣り、ワイン、韓流ドラマ。
株式会社ラクーンホールディングス