ビジネスモデルの重要性

売上は伸ばしたい。でも従業員を早く家に帰さなきゃ。昨今の経営者の悩みだろう。

日本人は良くも悪くも努力家である。一見して良いことのように思えるが、頭を冷やして考えてみると必ずしもそうではないことに気が付く。
友人と飲みに行くと、「会社から、売上は伸ばせ。でも残業は増やすなと言われた。いったいどうすればいいんだ?」といった話をよく聞く。その友人は仕事を家に持ち帰るという結論に至った。もちろん残業代は付けていないのだろう。みなさんならどうするだろうか?

さて、これらの問題を解く鍵が「ビジネスモデル」だと私は考えている。ほとんどの日本人が努力というと「量的な努力」しか思い浮かばない。しかしブラック企業問題が問いただされている今、労働時間を増やさずに利益を増やす方法について議論しなければならないのだ。
ある牛丼屋は、一晩中営業していたがスタッフを1人しか配置していなかった。それだと休憩も取れないし、防犯上の問題もあるだろう。また、ある居酒屋は若い従業員に大量の残業をさせていた。両者に共通しているのは、大量の労働時間である。これらは牛丼屋や居酒屋に限ったことではない。日本の小売業全体で起きている問題なのではないだろうか。


「神の見えざる手」とは、アダムスミスの言った言葉だ。市場経済においては個人が自己の利益を目指せば、社会全体は結果として良くなるとしたものだ。競争でより優れたサービスが残るので、政治や行政はそれに関与する必要がないとするものである。しかし、それは本当だろうか?
もしかしたら神の手は存在しないから見えないのではないだろうか。彼らは商品の安売りをやっているつもりなのだろうが、実際のところ労働力の大バーゲンになってしまってはいないだろうか。ヨーロッパでは、このような競争が起こらないように法律で小売業の営業時間が大幅に規制されている。

日本政府の考え方が変わるのを待っている暇はない。我々経営者は自らの決断により、労働時間を増やさずに利益を増やす方法を検討しなくてはならないのだ。ラクーンは9つのサービスを展開しているが、主力事業は2002年から始めたスーパーデリバリーである。
実はこのビジネスモデルを始めるときに作ったビジネスモデルは、50個存在した。本当である。全て卸や流通に関係あるものばかりだが、ありとあらゆるパターンで検討したのだ。それらの中にはBtoCもあったし、アパレル・雑貨以外のものを扱う事業も存在した。

当初のモデルは問題だらけだったが、若い役員の石井や阿部がチューニングにチューニングを重ね、現状の利益の出るモデルへと完成させてくれた。もしこの時我々が「努力とはたくさん働くことである!」と考えていたならば、現在のように平均残業時間20時間/月の会社にはならなかっただろう。


例えばここにA社とB社があったとする。資本金も従業員数もほぼ同じ会社だ。ただし、待遇に大きな違いがある。A社は残業だらけで、給料が安い。B社はみんな早く帰って休日も休みだ。趣味を持ったり家族と過ごしたりできて、給料も悪くない。よくある話だ。
ほとんどの人が、このような違いが生まれるのは「経営者の性格の違い」のせいだと思ってはいないだろうか?私は、それはそう思わない。実はこの違いこそが、ビジネスモデルの違いから起きる違いなのだ。優れたビジネスモデルがあれば、もしくは現状のビジネスモデルを改良する能力があれば、労働時間を増やさなくても売上や利益を上げることは可能なのだ。

次回以降、ビジネスモデルを検討する上でのコツや方法など実際に私がどのようにしてきたのかを例に、もう少し詳しく説明してみることにする。

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小方 功

Isao Ogata

株式会社ラクーン代表取締役社長

1963年札幌生まれ。北海道大学卒業後、パシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。
独立準備のために30歳で会社を辞め、1年間中国に留学。
帰国後、家賃3万円のアパートの一室、お金、人脈、経験もないところから100万円でラクーン創業。
大赤字や倒産の危機を何度か切り抜け、02年にはラクーンの主力事業となるメーカーと小売店が利用する卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」をスタート。そして06年にはマザーズに上場。
現在、ラクーンは企業間取引を効率化するための4つのサービス「スーパーデリバリー」「T&G売掛保証」「Paid」「COREC」を提供している。

プライベートではまっているのは釣り。あとは習字を習い中。