コストをかけずに社員が豊かになる方法

「社員の生活レベルを向上させよう」とすると、何かにつけコストがかかる・・・という経営者に時々会うが、そうとは限らないと思う。給料は多い方が良いとは思うが、その前にするべきことってたくさんあると思っている。
そんな一例をちょっと紹介してみよう。

■本社の移転場所を固定している
ラクーンは創業してから22年経つが、これまでに7回引っ越しをしている。引っ越す理由は狭くなるからだ。
実は私はこの「引っ越し」に関して、みんなに1つの誓約をしている。
それは、「少なくとも私が社長であるうちは、本社の移転先は人形町駅、茅場町駅、水天宮前駅に囲まれた三角地帯(現在本社のある場所)周辺に限る」という内容だ。

なぜそのような誓約をしたかというと、それは「社員が家を買いやすくなる」からだ。

私はサラリーマンを4年半ほど経験したことがあるが、その前職では本社が西へ東へと脈絡なく移転した。
先輩達はその都度ため息をついていた。家と会社が遠くなる人が出るからだ。通勤出来なくなり家を売った人も少なくなかった。2回も移転したので、体力だけでなく精神的にもダメージは大きかったのだと思う。
こういうのは士気が下がるなとつくづく思ったのを覚えている。本社の場所をある程度決めておくことにより社員は人生設計をしやすくなる。
ラクーンでは、この方針を打ち出して以降、家を買った人はかなりの数に及んでいる。

■定例会議は月金を避ける
定例会議を設定する場合は、極力月金を避けるようにと指示している。
これは有給を取りやすくするためだ。会社として有給の消化を推奨しているが、定例会議が入っているとその休みも取りづらい。
そこで、月金には定例会議を入れないようにとしているのだ。一般的に社員がもっとも有給を希望するのは月金だ。土日に繋げると三連休になるし、実際の連休などは、混んでいて高いので月金をうまく使って旅行すると予算も少なく済むし予約も取りやすい。最近では連休に海外に出かける社員も少なくないが、連休最終日の飛行機も1日遅らせるだけで随分と安くなる。

ちなみに、月金は各部門などの定例会議が入っていないので、部門を跨ぐ大きな会議は逆に月金に入れやすくなり、とても便利になる。

■3km以内に住むと2万円の手当てが支給される
「ずいぶんと田舎だけど、一軒家を買いました。」というのはよく聞く話だ。
ただ、このような話しを聞くと、ちょっとおかしな話に聞こえるときがある。一軒家は地方に行くほど安くなるが、会社が払う交通費は逆に高くなるからだ。新幹線通勤で定期が月に10万円とかだったら、会社の負担は結構なものになる。
私が困るというのではなく、会社のお金は全従業員の資産であろうという観点において、特定の1人だけがそのような事情で月に10万円もの負担を会社にかけるのはよくないだろうという話しだ。役員達と話し合い、そのようなお金は鉄道会社に払うよりも従業員に払った方がいいと考え、近隣3km以内に住む人に2万円の手当を支給することにしたのだ。
このルールが出来て以降、独身者の大半が3km以内に住むようになった。彼らの大半は自転車で通勤している。

「住宅手当は珍しくないぞ」と思う人もいるかも知れないので、それとの違いを説明しておく。
そもそもベンチャー企業としてスタートした企業の多くは、必ずしも個人の生産性と比例関係のない住宅手当とか家族手当っていうものを嫌う傾向があり、ラクーンもその辺は同様である。
「貰えるものは少しでも多い方が良い」という考えは、「会社のお金はみんなの財産」という認識形成を邪魔するからだ。悪い意味でもサラリーマン根性の様なものを育てたくないということだ。
そういうわけで、ここで説明する3km手当てと一般的な住宅手当は全く異なるのだ。


これらのルールを運営する上で、新たな出費は必要ない。会社がちょっと考え方を変えるだけで済む。
しかし、社員の実質的な生活は向上するのではと思う。

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小方 功

Isao Ogata

株式会社ラクーン代表取締役社長

1963年札幌生まれ。北海道大学卒業後、パシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。
独立準備のために30歳で会社を辞め、1年間中国に留学。
帰国後、家賃3万円のアパートの一室、お金、人脈、経験もないところから100万円でラクーン創業。
大赤字や倒産の危機を何度か切り抜け、02年にはラクーンの主力事業となるメーカーと小売店が利用する卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」をスタート。そして06年にはマザーズに上場。さらに16年には東証一部に上場。
現在、ラクーンは企業間取引を効率化するための4つのサービス「スーパーデリバリー」「T&G保証」「Paid」「COREC」を提供している。

プライベートではまっているのは釣り。あとは習字を習い中。
株式会社ラクーン