雑誌や新聞の切り抜きを机に置くな

我々は、事業が唯一無二のものであることを重視している。しかし、実際にそのようなビジネスを作り出すにはどうしたらよいのだろう。ほとんどの人がそこでフリーズしてしまう。実は最初に「唯一無二」に捉われ過ぎると大切な点を見落としてしまう。大事なのは、結果として手がける事業が市場のニーズをつかみ取ったものであり、他では得られないサービスであることなのだ。それさえあれば、人々に感謝され、またそれに見合った対価も得られる。
その事実があればそれでいいのだ。

顧客から感謝や尊敬を貰えるということは、働く人にとって最大のやりがいであり、そのことは職場にも良好な人間関係をもたらす。人の弱みにつけ込むようなビジネスや、儲かるかもしれないが何らかの被害者を生み出すようなビジネスを行っていたのでは、社内の雰囲気もよくはならない。提供するサービスに公共性がないのに、社内に良好な人間関係を求めるのは、とてもおかしな話しだ。

さて、話しが少々脱線したが、答えは「顧客の声に耳を澄ませること」だ。
「無から有を生み出せ」といっても、本当に白い紙とペンだけ置いて悩んでも良いアイディアは出ないものだ。やはり何らかのヒントがあることは重要だ。ただ、このヒントの頼りどころを雑誌や新聞にしてしまうと、他の成功例を見た後なので他社のサービスに似通ってしまうのだ。毎日流行曲を聴いている人が、作曲をすると何かに似てしまうというような感じだ。
もし雑誌や新聞を読むのが大好きだという人がいるならば、思い切って2,3日それを閉じてみたらどうだろう。2,3日見なくても生活にさして支障はないだろう。そして、その雑誌や新聞の代わりに顧客の声を聞くのだ。クレームでもいい、要望でもいいし、世間話でも構わない。

それらをヒントにして、顧客のニーズを探るのだ。自分自身だって、普段は消費者だ。消費者として、サービス提供者に、「○○をしてくれたら私はお金を払うのに」と思ったことはないだろうか。そう、「顧客はお金を払いたがっている」という前提にたって、その声に耳を傾けるならばすべてが変わって見えてくる。

カレーライスもとんかつ定食もある食堂で、「カツカレーはないのか?」と聞かれたら困った顔して「やってません」と答えるようなそんな経営をしてはならない。メニューにないものを頼む人からは少々多目に貰っても怒られない。ただし、単にアンケートを採って人気の順に手がけるようなことをしてはいけない。それらの意見はあくまでもヒントであって答えではないのだ。答えを“創造”するのはサービスを提供する側の仕事であることを忘れてはならない。それを忘れたら顧客からの感動は得られない。

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小方 功

Isao Ogata

株式会社ラクーン代表取締役社長

1963年札幌生まれ。北海道大学卒業後、パシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。
独立準備のために30歳で会社を辞め、1年間中国に留学。
帰国後、家賃3万円のアパートの一室、お金、人脈、経験もないところから100万円でラクーン創業。
大赤字や倒産の危機を何度か切り抜け、02年にはラクーンの主力事業となるメーカーと小売店が利用する卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」をスタート。そして06年にはマザーズに上場。
現在、ラクーンは企業間取引を効率化するための4つのサービス「スーパーデリバリー」「T&G売掛保証」「Paid」「COREC」を提供している。

プライベートではまっているのは釣り。あとは習字を習い中。